日本の社交ダンスのトッププロのレクチャー(雑誌やDVDなど)を見ていると、
「インナーマッスルを使って踊りなさい」とか、そんなことを平気で言っている。
しかしながら、インナーマッスルをどのように使えばいいのか? という説明がない
ばかりか、インナーマッスルとは何か?という説明も、まったくなされていない。
知ってる人にとっては、「釈迦に説法」だけど、社交ダンスの先生はこれを教えない。
大まかにいえば、人間の筋肉(muscle・マッスル)は「インナー・マッスル」と
「アウター・マッスル」に分類される。
アウター・マッスル(outer muscle 表層筋)は、皮膚に近い部分にある筋肉で、
「アタマで考えた通りに動いてくれる筋肉」・・・だと考えれば、わかりやすい。
インナー・マッスル(inner muscle 深層筋)は、「皮膚の上からは、ほとんど手で
触れる事ができない、カラダの深い部分に分布する筋肉の集まり」であって、
ものすごい潜在的なパワーを持っているけど「アタマで考えた通りには、動いてくれ
ない筋肉。思った通りには動かない筋肉」だと考えれば、わかりやすい。
わかりやすい、簡単な例で、比較してみれば、違いがわかるかと思います。
Aさん、Bさんの二人が1m離れて、向かい合って立っているとしましょう。
お互いが、相手の胸に向かって、拳(こぶし)を出します。
拳(こぶし)の出し方には、二つの方法があります。
【Aさん】
「腕に体重を預けて、体重を拳(こぶし)に乗せる感覚」で拳を出します。
アウターマッスルだけでなく、カラダ全体のインナー・マッスルを含めた
たくさんの筋肉が動いて、「カラダ全体を使ったパンチ」を打つことができます。
腕全体のの動きは、滑らかで美しく、それでいて、素早い動きになります。
【Bさん】
相手に向かって、拳を出すためには、まず、肘が持ち上げながら、前方に移動
させます。それには「肩の筋肉」を縮めればいいんですよ。簡単でしょ!
拳(こぶし)を前に伸ばしたいなら、「肘の筋肉」を伸ばしていけばいい。
カラダが前に倒れないように、おなかに力を入れて踏ん張って立つんです。
そして、背中の筋肉を伸ばして、背中の筋肉を縮めて、しっかり胸を張る。
この方法だと、アウターマッスルは動くけど、インナーマッスルは動きません。
Aさんの動きも、Bさんの動きも、外見上は同じに見えるかもしれない。
だけど、カラダの使い方は、まるっきり違ってるはずです。
Aさんの動きと、Bさんの違いがあることを、生徒に教えるのことが大切であって
違いを理解することができたなら、「あなたは、どちらが良いか?」と生徒に問い
かける。 Aさんの動きは「難しい」けど、Bさんの動きなら誰でもできる。
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社交ダンスで、男女が組むときに、最初にやることは
男性が左腕(左肘)、女性が右腕(右肘)を持ちあげながら、男女の掌をくっつ
けます。
このときの、「腕(肘)を持ち上げる」という動きに、「インナーマッスル」を
使うか、「アウターマッスル」を使うか? この選択は重要です。
インナーマッスルを使って腕(肘)を持ち上げるのであれば、呼吸法を工夫する
とか、「気の流れ」をイメージするとかして、カラダの中のインナーマッスルを
動かしてやれば、自然に腕が持ち上がって、楽な姿勢になります。
(アタマで考えた通りには腕は動いてくれませんが、一度、覚えれば簡単です)
アウターマッスルを使って、腕(肘)を持ち上がるのは簡単です。
肩の上側の筋肉を縮めてやれば、肘が持ち上がります。
脳から「肩の筋肉を縮めろ!」という指令をだせば、肩の筋肉は縮みます。
脳から「肘の筋肉を縮めて、肘を曲げろ」という指令をだせば、その通りになる。
じゃぁ、どちらを使って、ホールドを作るかは、好きな方を選べばいいです。
言うまでも無く、アウターマッスルを使った方が、はるかに簡単ですよ。
ただし、窮屈(きゅうくつ)なホールドで、「開放感」は劣りますけどね。
なんで、こんな簡単なこと、教えないんだろ???
インナーマッスルとか教えてたら、生徒、来なくなるから。
「生徒をたくさん集めてお金儲けしたいけど、自分を超えるような有能な生徒を
育てたくない」場合は、インナーマッスルなんて、絶対に教えないでしょうね。
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