日本国内においては、「大きく踊るための定番」とされている「送り足」というテクニック。
しかしながら、英語の単語(社交ダンスの用語)は、「送り足」という単語は存在しない。
なので、「送り足」というテクニックの説明は、外国人のレクチャーのビデオ(DVD)には
出てこないし、外国人の動画をみても、「送り足」を理解することは不可能に近い。
正しい「送り足」というテクニックを理解するためには、「日本の社交ダンスの歴史」を学ぶ
必要があり、それには「昭和末期から平成の始めくらいに活躍した、日本のトッププロ」が
書いた本を熟読する必要がある。
とっくに還暦をすぎ、現在70~80歳くらいのプロ教師の社交ダンスを学び、研究することで
はじめて「送り足」というテクニックのすごさが、見えてくる。
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日本の社交ダンスは、「暗くて狭い、ごちゃごちゃした場所で、男女が抱き合って踊る」ところ
から、スタートしている。
改正される以前の風俗営業法では、「ダンスホールは10ルクス以上、ダンス教室は20ルクス
以上の明るさが必要」とされていた。
つまり、昔は「20ルクス以下の薄暗いダンス教室」がたくさん存在していたので、法律で「20
ルクス」以上というキマリが出来た・・・と考えるとわかりやすいかも。
ちなみに「20ルクス」というのは、かなり暗い。(かがやき練習会の会場は、1000ルクス)
20ルクスの薄暗いダンス教室で「大きくダンスを踊る」などという発想が生まれるはずも無く・・・
男女二人がボディをくっつけ合って、ボディが離れないようにホールドを組み
前進側は、ボディを「グイッ・グイ・グイ」と前に押しながら、膝を持ち上げて前に進む
後退側は、ボディを「カクっカクっカクっ」と後ろに引きながら、邪魔しないように後退する。
つまり、ボディをくっつけたままで、お互いが、押したら引け。 引いたら押せ! って感じ
それが、日本の社交ダンスの「正しい踊り方」
暗くて狭い場所では、大きく踊る必要性もないし、そもそも、大きく踊ることもできない。
それが、「日本の社交ダンスの基礎」になっている。
その後、社交ダンスの全盛期を迎え、公民館ダンスが、盛んになる。
ダンスを知らない男女が、カップルを組んで、「号令」に合わせて、ブルースを踊る。
前進側は、「スロー・スロー」という号令に合わせて、ボディを「グイッ・グイ・グイ」と前に
押しながら、膝を持ち上げて、足を前に出す。
そして、「クイック・クイック」で、男女が一緒に回転する。
内まわりの歩幅は、小さく小さく!3センチ!!
外まわりは、内股で足を開いて、相手を「またぐ」ようにして、ガバッと回転する。
ダンスを知らない「初心者の男女を、適当に組ませて、ボディというより、胸をグイグイ前進
させながら、相手に向かって進んでいく。
姿勢を崩さなければ、「大変よく出来ました」ということになる。
ほんとうに、それが、本場イギリスで踊られている、正しい社交ダンスなのだろうか?
昭和末期から平成初期に掛けて、活躍していた日本のプロ教師たちが、
「オレ様の踊りこそが、本場のイギリスの正しい、完璧な踊りなのだ!」
といって教え、
公民館ダンスをかじった人たちが、
「イギリスのトッププロも、わたしたちの踊りとまったく同じテクニックを使ってるんだ!」と
感動の涙を流して、ボディをグイグイ押し出しながら、公民館ダンスに没頭する。
「送り足」というテクニックが、全国的に「大きく踊るための定番のテクニック」として
もてはやされてきた背景には、
「ボディをグイグイ、前方に押し出していく踊り方」こそが、社交ダンスの基本である。
というプロ教師の指導が大前提になっていると思われます。
ボディを勢いよく押し出して、前方に突っ込んでいくよりも
「片足で立てる限界」を探りながら、片足で立って、反対の足を前に伸ばしていく方が
大きく踊れるのですが・・・・。
数万人はいると思われる「社交ダンス」の日本人プロ教師の中で、誰一人として、そのことに気づかない。
あまりに悲しいことである。
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