日本国内で大きく踊るためのテクニックとして、有名な「送り足」というテクニック。
ところが、社交ダンスの公式用語である英語には、「送り足」に該当する単語が存在しない。
「送り足」というテクニックの奥深さをしるためには、昭和末期から平成初期にかけての「日本の社交ダンスの歴史」を知る必要がありそうです。
今回は、「日本の社交ダンスの歴史」を知るために不可欠な、かんたんな基礎知識。
「人間の歩き方」は、すべてが同じではありません。
「急ぎ足で小さな歩幅で歩く」ときと「大きな歩幅(大股)でブレを最小限にして歩く」のとでは
カラダの使い方が根本的に違うはずです。
「急ぎ足」で歩数を稼ぎながら、「通常歩行よりも小さな歩幅」で歩く時には、
胸を張って斜め上を見て、胸を前方に押し出しながら、左足を前に出す。
支え足である右足の踵(ヒール)を持ち上げながら、カラダを前方に送りだす。
こうすれば、「急ぎ足」の歩き方でも、それなりに大きな歩幅で歩くこができます。
では、大股で(大きく足を開いて)、大きな歩幅で歩くときは、どうでしょうか?
フルパワーで胸を前方に突き出して、「送り足、最大出力!進めぇ!」と叫びながら、
後ろ足の足首を使ってカラダを前方に送り出せば、大股で歩くことが出来るでしょうか?
できません。
片足を遠くに伸ばそうとすると、カラダ全体がぶっ倒れてしまいます。
遠くへ伸ばそうとした足が、中途半端な位置で、ドスンと着地してしまいます。
では、「大きな歩幅で歩く」あるいは、単純に「出来るだけ、遠くに左足を伸ばす」には、
どうすれば、良いでしょうか?
社交ダンスを踊ったことのない人でも、「歩く」ことができる人なら,答えが見つかるはずです。
支え足(右足)の足の裏に掛かるウェイトが、
ボール(母趾球)からトォ(爪先)に移動しないように(ボールにウエイトが残るように)
カラダ全体の筋肉を変化させて、垂直感覚を維持しながら静かに前方に左足を伸ばしていく。
左足を前方に伸ばすことによって、支え足のウエイトが、ボールからトォへ移ろうとするならば
カラダ全体(手の指先から足の裏まで)の95%の筋肉を使って、ウエイトがボールに残るよう
にバランスをとる。
左足を前方に伸ばすことによって、カラダが(アタマから)前方に倒れようとするならば、
カラダ全体の95%の筋肉を「カラダを後ろに(支え足の上に)戻そうとする方向」に使う。
カラダ全体の筋肉を「支え足の上に残す筋肉」と「前方に進める筋肉」に分けて、両方を使う。
少ない方の5%の筋肉を、前方に進ませる方向に使えば、バランスを取りながら、カラダ全体の
左足は遠くに伸ばすことが可能になるはずです。
「大きな歩幅で歩く」ときに、絶対にやってないことは・・・・
胸を中心とする上半身全体を「ひとつの肉の塊」と見なして「勢いよく前方にに突き出す」こと
支え足の踵(ヒール)を持ち上げて、支え足で「勢いよく前方に送り出す」こと。
わかりやすく言えば、
カラダ全体の筋肉を、全力集中で「前方に突進させる!」方向に使ってしまってはダメだ。
ということでしょうか。
難しく考えるまでもなく、「歩く」ことが出来る人ならば、誰でも体感的に理解できると思いますが、
悲しいかな「社交ダンス」を始めてから、「先生」と呼ばれる人たちに、おかしな先入観を植え付け
られてしまうと、「歩く」という基本動作さえもが見えなくなってしまいます。
日本の社交ダンスの歴史の中で、「うす暗いところで、小さく踊る」社交ダンスの基礎で、
無理矢理に大きく踊ろうとした、昭和末期から平成初期に掛けての「トッププロ」と呼ばれる
人たちが、日本の社交ダンス界全体に「おかしな先入観」を植え付けてしまったような気が
します。
「大きな歩幅で歩く」ときの、カラダの動きを観察すれば、「日本の社交ダンス」の矛盾点に
気がつく人は少なくないように思います。
「昭和末期から平成初期」の頃に活躍したトッププロの「常識」は、すべて間違っているものと
して、捨て去った方がよいかもしれません。
次回は、「大きな歩幅を稼ぐための、理想的な腕の位置」について、考えてみたいと思います。
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