日本国内においては、大きく踊るためのテクニックとして「送り足」というテクニックが、よく知られている。
ところが、社交ダンスの公式用語である英語には、「送り足」に該当する単語が存在しない。
なので、「送り足」というテクニックを知るためには、「日本の社交ダンスの歴史」を勉強する必要がある。
昭和末期から平成初期にかけて第一線で活躍したプロ教師の本を、何度も何度も、繰り返し読み返していくと、
「日本の社交ダンスの歴史」と「日本の社交ダンスの本質」が、少しづつ見えてくるようになります。
日本の社交ダンスは、
「暗くて狭い場所で、男女が抱き合ったまま前後に移動し、男女が同時に回転する」
という動きがベースになってます。
この写真で、前進するときの歩幅をみると、靴の長さの2倍を超えるくらい(両足の間に、靴が1つ分入るくらい)
です。
もともと、日本の社交ダンスの概念には「大きく踊る」という概念が無いので、これが模範的なダンスですね。
ダンスを踊る時に「歩幅」を意識することは、極めて重要な要素です。
他人に「大きければ大きいほど良い」というのではなく、「ふつうに歩く時の歩幅(通常歩行)」と比較
して、「通常歩行よりも小さい歩幅で踊る」か「通常歩行よりも大きな歩幅で踊る」かの選択が重要です。
ふつうに歩くときの歩幅(というか、歩く時の足の移動距離)は、
「足の長さ、または靴のサイズの2.5倍」を目安にすると、わかりやすいように思います。
26cmの靴を履いてる人の足の移動距離は、26×2.5=65cmくらいでしょうか。
両足を開いた時に、前足の踵と後ろ足の爪先の間に、靴が1個半、入る計算になります。
社交ダンスを踊ってる時の歩幅が、この「通常歩行よりも小さい人」は、
「ダンスを踊るときの歩幅を、通常歩行に近づけていけば、従来よりも大きな踊りになる」
ということです。
腕を持ち上げて、肘を真横に張った姿勢で、片足の膝を持ち上げると、バランスが崩れます。
「大きく踊るために、カラダを前方に進めるんだ!」という意識が強ければ強いほど、
カラダ全体がは前方に倒れ込んでしまい、大きく踊ることができません。
じゃぁ、どうすればいいのか?
下を見ないで、斜め上(2階席)を見て、思いっきり胸を張って、胸を前方に押し出していきます。
「急いで歩く・早足で歩く」時と同じカラダの使い方を意識すれば、バランスが維持できて
カラダは倒れません。
後ろ足(支え足)の踵(ヒール)が自然に持ち上がって、「支え足でカラダを送り出す」動きが
無意識に出来るようになります。 胸を大きく前に出せば、踊るときの歩幅も大きくなります。
日常的な「通常歩行」が出来る人ならば、ダンスを踊るときも、バランスを保つことができます。
でも、この踊り方には、「欠点」があります。
「急いで歩く時」の歩幅は、「通常歩行」の歩幅よりも、小さいということです。
「急いで歩く時」のカラダの使い方で、大股で歩こうとすると、たちまちバランスを崩します。
「日本の社交ダンス」は、「狭くてうす暗いところで小さく踊る」のが基本になってますので
「大きく踊る」という概念がありません。
なので、「通常歩行よりも大きな歩幅で踊る」ということは、全く想定されていません。
通常歩行の50%の歩幅で踊る人と、70%の歩幅で踊る人、90%の歩幅で踊る人がいたら
「90%で踊る人は、すごいね! 天才だね! チャンピオンになれるよ!」という具合に
周囲の人から「大絶賛」を受けるはず。
「通常歩行の歩幅」よりも大きく踊ろうとすると、カラダが激しくブレまくります。
なので、大きく踊りたい人は、血のにじむような努力をして「通常歩行の歩幅」を目指します。
それが、「日本の社交ダンス」の「送り足」というテクニックです。
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