2016年12月に発売された
知らないと踊れない ボールルームダンス解剖学(スタンダード編)/大田英光(著)
今回からは、「ホールドの作り方」について、考えていきましょう。
社交ダンスのホールドは、「腕を持ち上げて、肘を固定する」
なので、肘がグラグラ動いたり、肩が上がって肘が落ちりするのは、NG。
なので、「どうすれば、腕を持ち上げた状態で、肘を固定できるか?」を
考えることになります。
「どんな方法であれ、ともかく肘を固定出来れば、それが正しいホールド」
と考えたくなりますが、そこには落とし穴があります。
肘を固定する方法によって、カラダの動きが大きく変わってきます。
まず、両腕を持ち上げて、真横に伸ばしてます。
肩(肩甲骨)から伸ばしていくよりも、胸鎖関節から伸ばしていったほうが
片側で5cmほど長くなるそうです。 両側で10cm伸びるのかな。
この姿勢で、誰かに「腕にぶら下がってもらう」と、姿勢が崩れやすいはずです。
そこで、太田先生は、おもしろいことをやってます。
左腕を真横に伸ばしたまま、右腕を正面に伸ばします。
そして、正面に伸ばした右腕を、肩の方にスライドさせる。
「右肩を後ろに置いてセット・・・」と書いてあります。
不思議なことに、この腕の位置では、抜群に姿勢が安定します。
誰かに、腕にぶら下がってもらっても、ほとんど姿勢が崩れません。
・・・ならば、「左腕を真横・右腕を正面」という姿勢から作ったホールドは
「完璧なホールド」になるのではないか?
そんな気がしますよね。
やってみればわかりますが、ここから作るホールドは、
「完璧といいっていいくらい、崩れません」
「ホールドの崩れで、先生に叱られる毎日」から、おさらば出来ます。
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ところで・・・・
ここで、「疑問が沸いてくる人」と「感動の涙を流す人」の違いが出てきます。
疑問というのは、
「何故、右腕だけが、前(正面)なんだ!」
「右腕を真横に置いたまま、左腕を正面に伸ばしたらどうなるのか?」
という点ですよね。
「右腕が前」の姿勢と「左腕が前」の姿勢は、見かけ上(外見上)では
「左右対称」に見えるはずです。
見かけ上だけでなく、骨格も左右対称ですし、腕の筋肉も左右対称です。
でも、肋骨(ろっこつ)と称する篭(かご)の中に収まっている臓器は
左右対称ではありませんので、腕の筋肉の動きは左右対称にはなりません。
実際、「肝臓」の位置を書き込んだだけで、左右対称には見えなくなります。
「大きくて、重くて、形が変化しにくい、右の腹部にある臓器」です。
「右腕が前」に伸ばしたときは、肝臓の上に右腕を置く感じになり
「左腕が前」のときは、肝臓を真ん中にして、両腕を伸ばす感じになります。
右が肝臓、左が胃です。
ホールドの作り方によって、カラダの動きがどう変化するかを
調べるのに、面白い実験があります。
両腕(両手のてのひら)で、棒を挟んで、棒を左右に回転させます。
まず、左に回転させてから、一気に右に回転させた方が、違いが明確になります。
両手の掌(てのひら)で、棒を圧縮するように挟み込んで、
棒を回転させる(肩を回転させる)と、骨盤は逆方向に回転しようとします。
両腕で棒を挟み込むと、「肝臓の上に両腕と胸鎖関節が、乗っかる」感じに
なります。この場合は、「肩と骨盤は逆回転」です。
こちらは、棒と肝臓を向かい合わせにして、肝臓を動かす方法です。
肝臓を動かせば、棒も動く。
両手の掌(てのひら)で、やさしく棒をすくい上げるようにします。
肝臓を左に向ければ、棒も左に向きます。肝臓を右に向ければ棒も右に向きます。
この場合、肩と骨盤は同じ方向に回転します。
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社交ダンスのホールドを作ったとき、そのホールドが正しいかどうかは、
「膝を回転させないようにして、肩を回転させてみる」
違いが出やすいのは、肩を左回転(リバース系回転)させたときです。
左肩を後ろに引いたとき、
骨盤は正面を向いたまま(右を向こうとする)
なのが正しいホールドなのか、それとも
肩と骨盤の左側が一緒に後ろに下がる
なのが正しいホールドなのか、確認しておく必要があります。
先生と生徒で、「骨盤の回転方向」の認識が違えば、
ウォーク以前の問題ですからね。
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