このシリーズも、実質的に今回が最終回。
2種類の「ナチュラルターン」の比較で、締めていこうと思います。
日本人の「社交ダンスのプロ教師」の大多数は、
「英国を始めとする世界のトッププロの踊りに、まるっきり関心を持っていない」
単に「世界のトッププロに習いに行ってきた」ということをステータスにしているに過ぎない。
マーカス・ヒルトンのレクチャービデオを見ていると、日本人の踊り方と何かが違う。
太田先生を始めとする「何度も海外留学をされている日本人のトッププロ」が教える
「ヒルトンを含む世界のトッププロから習得してきた、本場イギリスの踊り方」
と
「ヒルトンの初心者用のレッスンビデオ」
では、踊り方の基本(カラダの使い方の根底)が、まるっきり違っている。
日本国内では、「世界のトッププロから習得したと称される、日本人特有の踊り方」が
「本場イギリス人と同じ、絶対的に正しい踊り」として日本国内で推奨されている。
どこの誰が、どんな踊り方を教えても、問題ない。
だけど・・・・悲しいのは、
元世界チャンピオンであるマーカス・ヒルトンのビデオの説明をそのまま
説明しても、誰からも相手にされない(プロ教師からは、完全に無視される)ということ。
「オレ様の習っている一流プロ教師は,イギリス人と同じ踊り方を教えているのだ」
「ヒルトン!? そんなクソみたいな外国人の踊りは、野蛮人の踊りだから無視しなさい」
みたいな感じなのだろうと思う。
いったい、なぜ、こんなことになっているのか?
なぜ、日本中に数万人いると思われる、「日本人のほとんどすべてのプロ教師」は、
マーカス・ヒルトンの踊り方を、一貫して無視し続けるのか???
今回は最終回・・・・ということで、ナチュラルターンについて
2016年12月に発売された本
知らないと踊れない ボールルームダンス解剖学(スタンダード編)/大田英光(著)
と、
マーカス・ヒルトンの初心者向け(?)ビデオ「シンプリー・ザ・ベスト」
を比較してみまちょう。
日本人のプロ教師の踊り方(教え方)が、「英国人の踊り方と根本的に異なる」ことを
チェックしてみましょう。
ホールドの作り方は、いろいろな方法がある。
太田先生のホールドの作り方は、模範駅な「日本の社交ダンスのカラダの特性」を的確に表現している。
ホールドを作り、肩を左右に回転させると、腰と骨盤は逆方向に動く。
肩と腰を同じ方向に動かしたいときは、膝を左右に回転させる。
これは、レッグ・スウィングを起こながら、カラダ全体にターン(回転)を
起こすために必要不可欠な動作となる。
ナチュラルターンにおいては、カラダ全体を先方に進めん柄、
肩を右に回転させれば、腰と骨盤は左方向に回転して、カラダ全体に
「強いねじれ」が生じます。
カラダが右足の上を通過する直後に、力を抜いて「ねじれ」を解けば
スウィングする左足を、勢いよく前方へ振りだすことが可能になります。
それとともに、カラダ全体に右回転がかかり、正面へのスウィングが、
横へのスウィングに変わっていきます。
CBMは「左肩・左腰と同時に、右足を前に出す」という動作。
太田先生は、表現を変えてます。
「左ヒップと右脚を同時に出し......右足に乗る。
上体はCBMで左ショルダー(左肩)先行」
この動きを意識すると、カラダが右足の上に通過する直前まで
「右足のヒールに強い体重が掛かっている」ということです。
つまり、「ボール・ウェイト」ではなく「ヒール・ウェイト」で、
カラダを右足の上に移動させよ・・・という意識ですね。
****準備中*****
「ヒップが右足に真上」にいる時には、レッグ・スウィングは始まっておらず
右足は「踵に強い体重が掛かっている」状態。
基本的に、踵にウェイトが残っている状態では、スウィングを開始してはいけない。
カラダが右足の上を超えたとき、右足は「ボール・ウエイト」に変わるとともに、
スウィングが開始される。
右足は、すぐに「トォ・ウェイト」に変わり、右足の足首(アンクル)を使って
「前方に進んでいくカラダ全体と、スウィングする左足」をコントロールできる
かどうかが、ナチュラルターンを踊るときの「カギ」になる。
「右足のトォでスウィングをコントロール」するために不可欠なのは
・水平ではなく、斜め上に向けた、左足のアッパー・スウィング
・カラダを斜めに固める、足首から始まる右スウェイ
これにより、「右足の足首の内側」で、スウィングをコントロールできる
とともに、カラダ全体の回転(ターン)の動作を生み出すことができる。
左手首と左手の薬指は、ゆっくり円弧を描くように、少しずつ、向きが変わっていく。
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まずは準備運動。 膝を正面に向けたまま、肩と骨盤を左右に回転
「膝を左右に回転させる」のはNG、「肩と骨盤をねじる」のもNG。
これは、「タンゴ編」で紹介されている方法でなので、ワルツとは少し違うけど・・・
ワルツは、腕を持ち上げて、腕が止まって、腕が降りる瞬間に肘を曲げてやれば
ホールドが作れます。(膝は回転せず、肩と骨盤が同時に左右に回転するホールド)
ナチュラルターンは、補助足なしで、右足スタートで始めると、動きが明確になります。
(補助足でカラダに惰力をつけて、右足の上に向かって突っ込んでいくのはNGです)
(補助足から始めなければワルツが踊れない人と、補助足が不要の人がいるはずです)
ヒルトンは【4】から【5】に掛けて、ヒールに掛かる体重をゼロにしているはずです。
ヒールに体重を残したままだと、カラダが先に進まずに沈み込んでしまいますから。
「靴のヒールの部分」が軽く床にタッチする程度。
裸足であれば、靴のヒールの高さの分だけ、床から踵を浮かせます。
このとき、「踵を持ち上げよう」とか「足首を曲げよう」とかしても、うまくいきません。
「踵の踏み込み」と「膝を前に倒す」のとで、バランスを取ります。
動く足(左足)レッグ・スウィングは、両足を開いた【5】から開始し、両足を開いた【9】で
終了しています。 この動きが、一番美しくて、なおかつ一番大きな動きになると思われます。
「支え足(右足)の上をカラダが通過していく」、言い換えれば「カラダが支え足の上を乗り越えて
いく」間に、ゆっくりと「動く足(左足)の振り子運動」を行うことになります。
カラダを移動させながら、レッグスウィングを行うためには、
「スウィング中は、支え足の足の裏の感覚を変化させてはいけない」
ことが重要です。具体的には
「ボール・ウエイト、つまりヒールに掛かる体重がゼロになった 時点で
レッグスウィングを開始し、スウィング中はボール・ウェイトを保つ」
ということになります。
ヒールに掛かる体重が消える(ゼロになる)のが「カラダが右足の真上に来た時」で
あれ「両足を開いて着地した直後」であれ、その時点が「スウィング開始」のタイミング
になるはずです。
ヒールに体重を残したままスウィングを開始してはいけません。
次は、ワルツにおける「ラテラル・スウィング」、つまり「横方向へのスウィング」は
支え足(右足)の真横がスウィングの最下点(振り子の糸が垂直になる)に
なるようにスウィングすると、カラダは回転が掛からず、まっすぐ進む。
レッグ・スウィングは、これを基本にする。
スウィングの最下点を、支え足の爪先よりも前方になるように、スウィングする
意識的には、「斜め下に向かってスウィングする」ことによって、
「正面へのスウィング」を「ラテラル(横への)スウィング」に変えることができる。
「斜め下に向かってスウィング」は、「支え足がトォ・バランス」では、うまくいかない。
「支え足をボール・バランスに保ち、踵に体重を掛けないけど、踵で床を踏み込む」感覚を
キープする。
【14】の後、左足が前に出ていくとき、左足の向きがかわり、背中の向きが大きく変わる。
背中の向きが変わっても、左手首と左手の薬指は正面に進める。そして左手の指の直角に
急カーブさせると、レッグスウィングが完成する。
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どちらの方法でも、ナチュラルターンを踊ることができますが、
太田先生の踊り方と、マーカス・ヒルトンの踊り方を比較すると、
共通点は全くと言っていいほど存在しないように思います。
太田先生の踊り方が、「歴代世界チャンピオンの正しい踊り方」として
日本国内のトッププロの模範的な踊り方となっているように思います。
「歴代世界チャンピオンから取得した踊り方なのだから、みんなで同じ
踊り方をして世界を目指しましょう!」という具合に、地方の先生方は
何度も何度も、東京に通って、太田先生と同じ踊り方を取得する。
日本のプロ教師全体が、太田先生と同じ踊り方をする。
「マーカス・ヒルトンは、違う踊り方をしているぞ!」といくら叫んでも
誰も相手にしない。地方から(少なくとも競技会から)排除される。
おそらくマーカス・ヒルトン本人が、お忍びで地方のダンスパーティのフロアー
に立っても、爽快な踊りを踊っても、ほとんどの人はヒルトンの踊りを認めよう
とはしないでしょう。
外国人は足が長いから、へんてこりんな踊り方をしても、綺麗に見えるんだ!
それで終わり。 それが日本の社交ダンス。
「英国留学をしている日本人こそが、英国人の踊り方」なのだから。。。。
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