2016年12月に発売された
知らないと踊れない ボールルームダンス解剖学(スタンダード編)/大田英光(著)
によると、日本人の歩き方は「幽霊の歩き方」といわれている・・・・のだそうです。
社交ダンスは「音楽に合わせて、楽しく踊ること」が一番大切。
「幽霊の歩き方」で社交ダンスを踊ったとしても、それが楽しければそれでいい。
簡単に「人間の歩き方」に変えることが出来るのならば「人間」になればいい。
最悪な展開があるとすれば、「幽霊から人間になろうと必死に努力しているうちに、
幽霊にも劣るようなトンチンカンな歩き方になってしまうこと」だと思われます。
これだけは、避けなければなりません。
「幽霊の歩き方」の検証は回しにして、先に進みましょう。
太田先生のレクチャーによる「正しい前進ウォークの方法」を検証していましょう。
(今回触れるのは ①~⑥のうちの前半 ①から③ についてです)
前進ウォークには、「フット・プレッシャー」というテクニックが存在するようです。
「足底が床を押している力と同時に、床も足底を押している」
と書いてあります。
図の説明では、床を垂直に押すと、真上に向かった反作用が発生するように書いてあります。
いったい、なにをどのようにすると
垂直(上下)の力を「推進力にして前進」することができるのでしょうか?
誤解しやすいのは
「膝と足首を曲げて床を押してから、ワンテンポ遅れて、膝と足首が伸びる」
という動きではないということ。
膝と足首の屈曲・伸展を使えば、大きく前進することは可能ですが、これではありません。
「フット・プレッシャー」は、あくまで「作用と反作用は同時」です。
ここで「素朴な疑問」が沸いてきます。
社交ダンスのシューズは、弾力性がありません。
そして、踵(靴のヒールの部分)が高くなっています。
女性のハイヒールは、踵が7cmくらいあります。
靴の真ん中、つまり「靴底の斜め部分」に対して、「フット・プレッシャー」を使ったら
どうなるでしょうか?
「真上に向かって反作用が働く」のか、「斜め前方に向かって反作用が働く」のか?
ニュートンの法則(作用・反作用の法則)を使うと、どちらになりますか?
実際には、足の裏に体重を掛けると、カラダ全体の筋肉が変化するので、
物理の法則だけで説明しようとしても、説明なんて、できっこないでしょうし
物理の法則を使ったとしても、「真上への反作用」という考え方に正当性は感じられません。
靴底の斜めの部分、つまり靴の爪先と踵の中間の位置に対して「フット・プレッシャー」を
掛けた場合の反作用が、真上に働くのか、斜め上に働くのかは、左腕の使い方(筋肉の変化)
に大きく影響されます。
右手に割り箸をもち、左手にどんぶりを持って、片足を上げると、反作用は「真上」になります。
右手にナイフ、左手にフォークを持って、片足を上げると、反作用は「斜め前方」にあります。
「腕を持ち上げて肘を固定する」社交ダンスのホールドにおいて、片足を持ち上げたバランスを
取ろうとすると、普段の生活習慣で慣れた方向に、腕の筋肉が動きやすいです。
太田先生のレクチャーの「正しい前進ウォーク」の「フット・プレッシャー」がどちらなのかは、
写真を見れば「一目瞭然」だと思います。
人間のフットワーク(というより、足の裏の使い方)は、「腕の使い方」と大きく関わってきます。
「腕の筋肉の使い方」を変えれば、足の裏の使い方(土踏まずの使い方)も、変わってきます。
社交ダンスの愛好者においては、高齢者の公民館パーティの参加者レベルにおいても、
両方の「足の裏の使い方」をする人が混在しています。
数々の武道や西洋スポーツにおいても、両タイプのフットワークが混在していると思われます。
太田先生に限らず、日本国内における社交ダンスのレクチャーは、
「いつでもどこでも、フットプレッシャの作用は真下、反作用は真上に働く」
・・という説明になっています。
いったいどうやったら、「前進するための推進力」が生まれるというのでしょうか?
数十年間に渡って、多くの生徒にダンスを教えてきた先生が、2つのフットワークの違いに
気づかないのでしょうか?
「オレ様のウォークは、幽霊ウォークではなく、人間ウォーク」だ
「オレ様と違うウォークをするやつは、幽霊か悪魔だから、消えてしまえ!」みたいな
感じなのかもしれませんね。
ほんとうに、それって、正しいウォークなのでしょうか?
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